「その1」
送りましょうか 送られまそうか
せめて比刀根の 橋までもカネ
年期あけても 前橋去らぬ
切るに切れない 糸があるカネ
明けりゃ一昨年 去年の春に
故郷離れて 糸の町カネ
糸は正直だよ むらから切れる
むらが無ければ 切れやせぬカネ
糸挽きしまえば 沼田の里へ
つれて行くから 辛抱しな
糸目出てくれ 無い目はいらぬ
繭にあるたけ 出ればよいカネ
繭は煮加減 度はとり加減
糸目切れるは 手の加減カネ
切れてくれる 糸口さまよ
切れるたんびに 目がひかるカネ
糸や切れるな 座繰よ廻れ
晩の仕舞いが 遅くなるカネ
腹は竪町 身は細ヶ沢
落ちる涙が 広瀬川カネ
糸の細いのに 糸目の無いに
親方さまより わしゃ辛いカネ
「その2」
糸じゃ前橋 お機じゃ桐生
中の伊勢崎 太織縞カネ
糸は千度 切れてもつなぐ
糸量切れたは つなげないカネ
雨の降る日と 日の暮れ方は
思い出します 家のこと
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